ホーム・アンド・ジャーニー

ふるさとの珠洲(すず)と、そこから出てそこへと帰る旅にまつわるあれこれ。

東京旅行レポート ① 出発〜建築倉庫〜活版印刷体験

 
 2/23〜2/25に、東京へと旅したときの記録です。
 あとでレポート書くといいながら、1ヶ月ほどほったらかしでした。

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珠洲を見下ろして 雲がいい感じ
 2月23日、土曜日。
 予定どおりの行動をこなすような、適当に行き当たりばったりなような、気ままな旅でした。
 まずは、羽田空港からモノレールに乗って、天王洲アイルで降りる。「建築倉庫」という名の、建築模型博物館に行く予定だったのです。
 ずっと前から、天王洲アイルという名の駅があるなとは思っていたけど、こんな駅使うことはないだろうとずっと思っていました。しかしなんの因果か、建築の展示があるということで、その天王洲アイルとやらで降ります。予想どおりといえばそうだけど、埋め立てて作ったような人工的な、しかし風通しのいい土地でした。人の住む気配はありません。空をビュンビュン車が走るような都市です。
 その「建築倉庫」、間違えて隣の妙にラグジュアリーな施設に入ってしまい、田舎者として恥ずかしい思いをしたものの、普通に楽しめました。
 杉本博司の展示をやっていて、それがとても面白かったのです。
 「素材」がテーマの展示で、「江之浦測候所」という建築がフィーチャーされていたのですが、ぼくはその建築の存在を知らなかったものだから、なかなか衝撃を受けました。「素材」というのは、石、ガラス、木、竹などの自然素材で作られる空間、そこで人間が感じる、人間の原初の感覚という思考に繋がるのです。初めて人が建築的なるものの中に身を置いたとき、人はなにを思ったのだろうか。感じたこと、気づいたこと、驚いたこと。「江之浦測候所」は、そういうことに思いを巡らすための空間なのだろうなと、勝手に解釈しました。実物はいつか訪れてみたいと思います。
 ただ、ひとつ気になるのは、その実物よりこの模型の方がいいんじゃないかと危惧していること。上手くいえないけど、現実の空間で得られる感動よりも、模型や写真の美的素晴らしさの方が上なんじゃないかと、実際訪れてもないのに勝手に思案しているのです。というのも、杉本氏の作品を一度だけ観たことがあって、それは直島の作品だったのだけど、そのときの感動は今ひとつで、今回の展示でその直島の作品の模型があったんだけど、そっちの方がいいじゃん、なんて思ってしまったのです。もしかしたら、精神性が強すぎて、日常感覚からは遠くなり過ぎて、いまいちピンとこないのかもしれない。うーん、なんか引っかかるんだよな。でもいつかは本当に「江之浦測候所」には行ってみたいです。俗世離れした空間はそれはそれで楽しみたい。
 
 
 で、今日のメインはこれ。
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これ
 印刷博物館「印刷の家」でやっているワークショップに参加することです。
 前の記事にも書いたとおり、ぼくは本を作る人なので、印刷や組版には興味があって、その手の雑誌なんかをよく読んでいるのですが、その中で見つけたのが、この印刷博物館凸版印刷株式会社がやっているミュージアムで、印刷そのものを広範囲で捉えて、古今東西の印刷の展示がなされているのです。
 15世紀にグーテンベルク活版印刷を発明したことはもちろん、リトグラフ、版画、浮世絵、写植、オフセットなど、広範囲で「印刷」というものを捉えているので、とても為になるし面白かったです。
 その片隅にあるのが「印刷の家」という部屋で、そこでは実際に印刷の研究(?)がされていて、活版印刷のワークショップもやっているとうことで、今回の主目的はそれなんです。
www.printing-museum.org
 建築倉庫から急いできて、ワークショップ締め切りぎりぎりに着いたときには、希望者はぼくで5人目でした。定員は6名とのことだったけど、そのあと男の親子づれが来て、7人に。
 入ってわかったのだけど、みんなで活版印刷を学ぶ大きな作業台は6人掛けだったのです。ぼく以外は、女子大生2人組、中年おばちゃん2人組、そしてさっきの親子2人。ということで、ぼくだけがあぶれた状態で、ぼくはその大きな作業台とは少し離れたところで1人でやってました。すごく惨めでした。悲しくなりました。
 しかし、こういうことは慣れているので、気にせず(ネタになるなとは思いながら)、活版印刷に集中です。
 今日のテーマは、一筆箋の片隅に乗せる7文字の言葉。
 その場で出されたお題なので、その場で考えたのだけど、ぼくが思いついたのは〈いずれ春永に〉という言葉でした。これは、三島由紀夫がいつも手紙の末筆に書いていたという言葉で、「春永」というのが具体的になにを示すのかははっきりとはしないのだけど、その言葉の持っている雰囲気というか世界観がいかにも三島らしいなと思っていて、たまにかっこつけて真似してたりもしてました。今日はちょうど一筆箋の片隅にということで、これに決めた。(次の元号になるかも!?)
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字、字、字…
 漢字文化というのはとても恐ろしいもので、アルファベットだったら26個で事足りるものの、印刷のための活字を作ろうとしたら何千となく作らなければならないのです。当たり前だけど、なんだか効率の悪い文化だなと思います。義務教育の9年間以上もかけて、やっと覚えきるなんて…。それがいいんだけど。
 組んで、機械にセットして、などは言われるがままにやっているのですが、実際にやってみると、案外面白かったです。目の前で自分の組んだ字が印刷されるというすごくシンプルなことなのだけど、それがなぜだか感動的なことで、その感覚が不思議でした。パソコンで文字を書いてプリンタで印刷するなんて、今時だれでもやっていることだけど、なぜだか活版印刷でもって自分の選んだ(「植字」という)文字が目の前で、自力でインスタントに出来上がると、なぜだか不思議に感動を覚えるのです。
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こうやってセット
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インクのローラーを経て手前の紙に印刷
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こうなる
 全部で7枚印刷し、持って帰りました。友人にあげたり、送ったりして使いたいです。
 特に期待もせずにやってきたワークショップだったけど、これは来てよかった。少しでも興味が湧いた人にはおすすめします。
 
 ということで、1日目終了。
 そして、翌日24日は、上京自体のメイン目的である「顔真卿展」へ。
 長くなったので、日を改めて書きます。
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