ホーム・アンド・ジャーニー

ふるさとの珠洲(すず)と、そこから出てそこへと帰る旅にまつわるあれこれ。

エッセイ

悪を倒すものは悪なのか 〜舞台「ねじまき鳥クロニクル」〜

公演ポスター センスいい 11/20〜24の5日間、東京に行っていました。 目的は、村上春樹の小説『ねじまき鳥クロニクル』を原作にした舞台を観に。ついでにいろいろ観てきましたが、舞台について思ったことを書きたいと思います。 舞台としては、ものすごくも…

意味のある偶然

ぼくが大学院にいたときにお世話になっていたカウンセラーの先生は、河合隼雄氏のお弟子さんで、つまりユングの孫弟子にあたる。 なので、河合さんやユング心理学について、よく話してくれた(ぼくのカウンセリングだけど彼の方がよく喋っていた)。 たくさ…

神が死んで、アニメが生まれた

自分よりも絶対的に高次元の存在で、自分の全てを無条件で預けることができるものが神であり仏であり自然であり、その生き方が信仰だとしたら、近代以降、人は信仰に生きることが非常に難しくなった。 でも人は、そういう存在を常に求めている。求めずにはい…

縦書き横書きのナゼ

書道をやっていて、いや、やる前から、なぜ漢字は縦書きで、他の文字文化は横書きなのか、それをちゃんと説明を受けてことがないことを思うことがある。 もしかしたら、専門家が歴史的・文化的にきちんと説明したものがあるのかもしれないが、ぼくはあまりよ…

裏は、幸せ。

街角に立ち止まり 風を見送った時 季節がわかったよ ——荒井由実「生まれた街で」 酒井順子『裏が、幸せ。』(小学館文庫) 珠洲の本屋(いろは書店ではない)で、表紙を前面に出すかたちで堂々と陳列されていたので目についた本。 タイトルからも表紙からも…

縁・自由・身体 〜金沢・現代会議を聴いて〜 ③

第1回では、姜尚中氏の話を元に、漱石の話、漱石が語った「因果」について、少し仏教的なことを書きました。 nouvellemer.hatenablog.com 第2回では、内田樹氏の話を元に、日本的霊性、それから派生した身体性と霊性の関係について書きました。 nouvellemer.…

縁・自由・身体 〜金沢・現代会議を聴いて〜 ②

(承前)前回の記事です。 nouvellemer.hatenablog.com 一人目の姜尚中氏を受けて、というわけではありませんが、次は内田樹氏の講演がありました。タイトルは「大地の霊について」。 姜さんとなら、ということで、わざわざ神戸からサンダーバードで来られた…

縁・自由・身体 〜金沢・現代会議を聴いて〜 ①

昨日11/28(火)、金沢で開かれた講演会+ディスカッション「金沢・現代会議」というイベントに参加してきました。 これは、鈴木大拙館が毎年主催しているイベントで、ぼくは一昨年から聴くようになったものです(そのときは深澤直人さんと中沢新一さん)。 …

東北からのアイム・ホーム

(カッパのは話の続きはちゃんと書いています。まとまったら、また後日こちらに載せます。家に帰ったのにそのままカッパの話を続けるのもあれだったので、帰宅してのことを簡単に。) 家に帰るまでが遠足だとよくいう。 以前、旅の準備が好きだ、あれこれと…

東北旅ショートエッセイ「5日目:青森の悲しさとかわいさと」

青森の人たちはみな、うら悲しい目をしている。 かっこつけて文学的な表現をしたいわけではなく、実際そう見えるのだからしかたがない。旅人らしく彼らに話を振ってみても、みな申し訳なさそうに一言なにかを返すだけで、話は長く続かない。たぶん迷惑してい…

東北旅ショートエッセイ「4日目:青森に今度は西行と鴨長明が現れた」

ぼくがちょうど五所川原から青森駅に着いて、ホテルにチェックインしようと向かっているとき、夕食を済まそうと思い立ってガイドブックを広げると、よさそうなお店が近くにあることがわかった。「マロン」という喫茶店で、名物はジャマイカンカレーらしい。…

東北旅ショートエッセイ「3日目:青森にあらわれた三島由紀夫」

この旅の合間の時間に読むために、ぼくは1冊の本を持ってきた。三島由紀夫の『小説家の休暇』(新潮文庫)という本だ。あまりヘビーなものでは気が滅入るし、長い小説だとその世界とこの旅の世界とがちぐはぐになるし、なにかちょうどいいものはないかと、山…

東北旅ショートエッセイ「2日目:秋田の味」

秋田にはずっと興味があった。その文化に、である。 なまはげに代表されるような伝統風俗、いぶりがっこやきりたんぽなどの食べ物、土方巽の舞踏(写真集『鎌鼬』)、そして民謡。これらの文化は、ぼくの中ではひとくくりにつながっていて、ひとつの大きな「…

東北旅ショートエッセイ「1日目:山形と五月雨」

昨日の夜からむっとした空気が街を覆っていて、なんとなく過ごしにくかった。明日は雨かもしれない、と思ったらやはりそうで、昼過ぎから小さい雨が地面を湿らせはじめた。それはぼくが県中部の村山駅を出て、最上川に北上しているくらいのときだった。 そこ…

思い出はどんな味

東北旅出発前として、昨日「知らないところに向かって」と題した記事を書いたが、実はまだ東北には達していない。石川から向かうとなると、その前に新潟を通らなければならないからだ。 通るというか、ぼくはここでまず1泊した。 新潟は、ぼくが大学生として…

知らないところに向かって 〜東北旅出発前〜

予定を立てるのが好きだ。 この日にはこことここに行く、というような目星はみんなつけるだろうし、行きたいところのだいたいの時間から、電車の乗り降りの細かい時間まで。それを決めて、紙に記録する。以前は時刻表とにらめっこだったが、今ではスマホのア…

インドの3K その2「汚い」

関係ない話から入るが、ぼくはお風呂に入っても基本的に石鹸を使わない。湯船にしっかり浸かって、においそうなところは素手で擦るやり方をしている。そういう人たちがいることは知っていたが、験しに自分もやってみたら、存外の気持ち良さがあった。それで…

インドの3K その1「くさい」

インドは様々な匂いで彩られている。 旅した者は、その時々を思い出すとき、匂いも同時に思い出すだろう。 ふらっと入ったカレー屋の香辛料の匂い。道端のラッシー屋で焚かれているお香の匂い。あるいは路地裏の霊廟で焚かれているお香かもしれない。そして…