ホーム・アンド・ジャーニー

ふるさとの珠洲(すず)と、そこから出てそこへと帰る旅にまつわるあれこれ。

Both Sides, Now 和訳に挑戦

 
 ジョニ・ミッチェルというシンガーソングライターを知ったのは20歳くらいのときでした。誕生日に、父からライブ盤をもらったんです。
 それにこの曲は入っていたのですが、当時は他の曲とか、全体としての美しさのほうが記憶に残っていました。
 以後いろんな流れで、ジョニの別バージョン(オリジナルなど)で聴いたり、他のアーティストのカバーで聴いたりしていく中で、誰の曲なのかも曖昧になりつつも、気になっていた曲。
 きちんと聴いてみると、なんだか不思議な気持ちになって、興味を引っ張られるメロディーと歌詞だと思いました。
 ジョニの曲はそういうのが多くて、簡単には覗き込めない、深淵なものを感じます。
 ピーター・バラカン氏も、彼女の詩は文法的にも妙で、意味がはっきりしなところが多い、というようなことをどこかで書いていました。
 現代詩的なものでしょうか。
 
 この曲も、和訳がいくつかあれど、どうも納得のいく訳がなく。
 ということで、それらを参考にしながらも、自分で訳してみました。
 邦題では「青春の光と影」となっています。
 若き日に思っていた(青くさい)一面と、大人になってわかる(ほろ苦い)一面。その両面(both sides)があるという話。今はそれがわかるけど……でも実際そんなのよくわからない、と。
 僕も、思い当たる節はあるなと思います(ジョニがこれを作ったのは26歳!?)。
 若くて一面しか見えてなかったけど、今は両方わかる。でも、それは幻。いや、正確には幻ではないが、それはわかるんだど…そんなのどうしようもないし…今までも、多分これからも。といったところでしょうか。
 最後まで答えを出さない、いつまでも聴ける、味わい深い曲だと思います。
 

www.youtube.com

Both Sides, NowJoni Mitchell, 1969)
「でも今は…」

Bows and flows of angel hair
And ice cream castles in the air
And feather canyons everywhere
I’ve looked at clouds that way

ゆみなりに流れる天使の髪
宙に浮かぶアイスクリームのお城
どこを見ても羽毛の谷あい
雲ってそんなだと思ってた

But now they only block the sun
They rain and snow on everyone
So many things I would have done
But clouds got in my way

でも今はお日さまを遮るだけ
みんなのところに雨と雪を降らせて
ああ わたしはもっといろんなことができたはずなのに
雲はわたしを邪魔するだけ

I’ve looked at clouds from both sides now
From up and down and still somehow
It’s cloud illusions I recall
I really don’t know clouds at all

雲にも両面があるってわかるけど 今は
つまりは上からも下からも見えるけど でもどういうわけか
それはわたしの想う雲の幻
雲のことなんてほんとうは全然わからないの

Moons and Junes and ferris wheels
The dizzy dancing way you feel
As every fairy tale comes real
I’ve looked at love that way

月と六月とそれから観覧車
くらくらするようなダンスで
あなたをおとぎ話の世界にさえ連れていける
恋ってそんなだと思ってた

But now it’s just another show
You leave ‘em laughing when you go
And if you care don’t let them know
Don’t give yourself away

でもそれは上っ面
あなたは嘲る人たちの元はあとにして
できればその人たちには教えないでほしい
あなたを全部さらけ出す必要はないの

I’ve looked at love from both sides now
From give and take and still somehow
It’s love’s illusions I recall
I really don’t know love at all

恋にも両面があるってわかるけど 今は
つまりはギブ・アンド・テイクなんだけど でもどういうわけか
それはわたしの想う恋の幻
恋のことなんてほんとうは全然わからないの

Tears and fears and feeling proud
To say “I love you” right out loud
Dreams and schemes and circus crowds
I’ve looked at life that way

涙と怖れとそれから誇り
「あなたが好き!」とはっきりいうこと
夢と打算とそれからサーカスの観客
人生ってそんなだと思ってた

Oh but now old friends are acting strange
They shake their heads they say I’ve changed
Well something’s lost but something’s gained
In living every day

ああ でもむかしの友達はなんだか変
残念そうに「あなたは変わった」って
たしかに失ったものはあるけれど得たものもある
日々を生きる中でね

I’ve looked at life from both sides now
From WIN(give) and LOSE(take) and still somehow
It’s life’s illusions I recall
I really don’t know life at all

人生には両面があるってわかるけど 今は
つまりは成功と失敗が でもどういうわけか
それはわたしの想う人生の幻
人生のことなんてほんとうは全然わからないの

I’ve looked at life from both sides now
From up and down and still somehow
It’s life’s illusions I recall
I really don’t know life at all

人生には両面があるってわかるけど 今は
つまりは強い者と弱い者が でもどういうわけか
それはわたしの想う人生の幻
人生のことなんてほんとうは全然わからないの


疑問:
「雲」ってなんだろう?
 →以下に続く「恋」「人生」その他をひっくるめた「わからないもの」かな。
月と六月と観覧車?
 →これは他サイトを見るに、巡る季節を表しているらしい(六月はアメリカでは卒業の季節)。その情緒の暗喩なのかな。
それに続く「恋」の連での、あなたは嘲る人たちをあとにして〜の部分のtheyって誰?
 →「わたし」を含んだ、本当の恋を知らずに我儘言ってばかりいた子供のことかなと思った。

対句のように織りなす、若いころと今の見方の違い。でもまだわからない。
サビ(?)の部分の奇妙な英語がうまく訳せないのですが、自分なりの解釈で、曖昧なま答えを出さない感じにしてみました。

✴︎words & sentences✴︎
・recall:思い出す。呼び出す。召喚する。自分の思い出の中から呼び起こした主観的なイメージ、的に捉えました。
・dizzy:眩暈がする。くらくらする。
・give away:与える。寄付する。丸ごと差し出す。
・shake one' head:首を左右に振る。「いいえ」と言うときの仕草で、苦笑いしながら「お気の毒」と言いたい、みたいなニュアンス。