ホーム・アンド・ジャーニー

ふるさとの珠洲(すず)と、そこから出てそこへと帰る旅にまつわるあれこれ。

「ミティラー美術館」は新潟にある

 
 インドに行きたいなあ。
 なんとなく思いながら、ある雑誌のインド特集を眺めていると、面白いページを見つけました。

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 「ミティラー画」と「ワルリ画」という、インドの民族的な画についての、4ページだけの特集。「が」と読むのか「え」と読むのかは知りません。
 日本でいうところの民藝のようなものです。
 ミティラーもワルリも別々なのですが、前者だけを簡単に説明すると、以下のように。
 1934年、インドで大地震があったとき、ビハール州マドゥバニ地方(東北部のネパールに近いところ)を調査していたある学者が、壁に描かれたミティラー画を「発見」したとされています。それから、旱魃に悩まされていたこの地方の収入源として、そして女性の自活のために、政府がこの絵を売ることを推奨したとされています。そこから世界に広まりました(雑誌の記事より)。
 別の目的のために来ていたインドの田舎で、いきなりこんな絵が現れて、しかもそれがそこに古くから伝わる民俗文化(民藝?)だと知った学者の気持ちはどんなものだったんだろう。
 他の絵もこんな感じ。

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こっちはミティラー。「上弦の月を食べる獅子」。
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こっちはワルリ。「結婚から誕生」。
 今でこそ、この手のヘタウマ、カワイイ、そんな感じの絵はそこらで見かけるけど、上にも書いたとおり、これが発見(あくまで発見)されたのが80年ほど前の話。おそらくそれを狙ったわけではないと思われます。インドの一地方の女性たちが、その地の文化というか美意識というか、そんな大袈裟なものではないと思うけど、ちまちまと地道に描いていたのがミティラーでありワルリなのだと。特に「上弦の月を〜」なんてたまらんです。その筋にはかなり有名な絵のようです。夢枕獏に同名の小説があります。
 で、ここでなにが書きたいかというと、この特集のはじめのページに、ある文字を発見したのです(ミティラー、ワルリそのものについてはネットで詳しい記事が載っているでしょうし、そちらを参照してください)。

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 下にちいさ〜く書いてある<special thanks=ミティラー美術館>の文字。
 はじめは、なんとなくインドにそういう美術館があるのだと思っていたのだけど、ちょっと気になってググってみました。「ミティラー美術館」で検索!
 すると、トップに出てくるのは、「ミティラー美術館 ミティラーびじゅつかん 十日町市の美術館」という記事。

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 なんだそれ。新潟・十日町にあるという同じ名前のわけのわからない美術館が出てきたではないか。おれが知りたいのはインドのミティラーだ。
 しかし、そう思って別の記事も見てみても、これの他にミティラー美術館は見当たらず、やっぱりインドの地方にひっそりとあるのだろうかと思ったのです。
 でも、もしや。一応新潟のミティラー美術館も確認してみようと思い、そのサイトを開くと、果たして「ミティラー美術館」とは、どうやらこの十日町の美術館だったのでした。
 HPを載せます。
www.mithila-museum.com
 でもこの美術館、はたして生きているのだろうか。HTML感満載のHP、とっくに閉鎖しているのではなかろうか。そう思って見てみると、「謹賀新年」の更新が2018年1月15日にある。
 これは。
 これは生きている。ちゃんと見ても、ちゃんとやっている。ちょっと疑いすぎた。
 こうなると行かねばなるまい。しかも上に載せた「上弦の月を〜」はここの所蔵のようです。
 ミティラー画の他にも、ワルリはもちろん、ゴンド画というものなど、またインドの地方民俗文化の遺産も所蔵しているようです。インドのその手の芸術が展示されているのです。
 詳しくみて見ると、結構田舎にひっそりとあるよう。失礼な話、こんなところでよくも生き残っているなと思ったのが正直なところ。
 十日町出身の後輩に「ミティラー美術館って行ったことある?」とLINEしたところ、「どこの国かと思ったら、十日町!? そんざいすら知りませんでした。。」とのことでした。そんなこといわれるとちょっと心配になってきましたが、暖かくなったら時期を見て行ってみたいな。そう思っています。