ホーム・アンド・ジャーニー

ふるさとの珠洲(すず)と、そこから出てそこへと帰る旅にまつわるあれこれ。

Eleanor Rigby 和訳に挑戦

 
 すごく思い入れのある曲というわけではないけれど、なぜかずっと頭の中で引っかかって、聴くたびに不思議な気持ちになる曲。妙なクセがあると思っています。
 そのきっかけは、たぶん、高校生くらいにときにたまたまテレビで見かけたオーケストラ・バージョンのアレンジ(元々それっぽいけど)。
 名前も知らない人たちがこの曲を弾いていて、「あれ?これ、ビートルズの曲だよな?(ロック?)なんでこんなにクラシックらしくすんなり聴けるんだ?」と思ったのを覚えています。
 映画『イエスタデイ』も面白かったですね。主人公が件の教会で「靴下だっけ?何だっけ…?」と歌詞を一生懸命思い出そうとしていたシーンが思い出されます。
 もちろんぼくも歌詞の意味など全然知らず、ふと歌詞を読みながら聴くと、なんて不思議な曲なんだろうと思い、和訳してみようと思いました。
 いくつかのサイトで和訳を読んだけど、いまいちしっくりこなくて。これはおれが感じたこの曲じゃない、と不遜にも思って。
 調べてみて初めてこの曲の背景を知ったけど、それを織り込みながら、自分が最初に感じた不思議な感覚を大事にしながら訳したいと思います。
 

www.youtube.com

Eleanor RigbyJohn Lennon / Paul McCartney, 1966)
「エリナー・リグビー」

Ah, look at all the lonely people
Ah, look at all the lonely people

おゝ 此れら孤独の者らを見よ

Eleanor Rigby
Picks up the rice in the church where a wedding has been
Lives in a dream

 エリナー・リグビー
 結婚式あとの教会で 落ちた米を拾っているよ
 夢の中に生きているんだ

Waits at the window
Wearing the face that she keeps in a jar by the door
Who is it for ?

 窓辺で待ってるみたい
 ドア脇の瓶に入れてるおしろいを 一生懸命ほどこしながら
 でも だれのために?

All the lonely people
Where do they all come from?
All the lonely people
Where do they all belong?

此れら孤独の者ら 何処より来たるや
此れら孤独の者ら 何処に入るべきか

Father McKenzie
Writing the words of a sermon that no one will hear
No one comes near

 ファーザー・マッケンジー
 だれが聴くとも知れない 説教のセリフを書いているんだ
 ……たった一人

Look at him working
Darning his socks in the night when there’s nobody there
What does he care

 たとえば彼のこんなしぐさ
 だれもいない夜に 靴下のほつれを繕っているよ
 でも そんな気にすることあるかな?

All the lonely people
Where do they all come from?
All the lonely people
Where do they all belong?

此れら孤独の者ら 何処より来たるや
此れら孤独の者ら 何処に入るべきか

Ah, look at all the lonely people
Ah, look at all the lonely people

おゝ 此れら孤独の者らを見よ

Eleanor Rigby
Died in the church and was buried along with her name
Nobody came

 エリナー・リグビー
 教会で死んで その名とともに埋葬されたって
 参列者はなし

Father McKenzie
Wiping the dirt from his hands as he walks from the grave
No one was saved

 ファーザー・マッケンジー
 手の泥を払って 墓から歩いてくる
 だれも救えなかった……

All the lonely people (Ah, look at all the lonely people)
Where do they all come from?
All the lonely people (Ah, look at all the lonely people)
Where do they all belong?

此れら孤独の者ら そなた 何処より来たるや
(おゝ 正に見よ此れらを)
此れら孤独の者ら そなた 何処に入るべきか
(おゝ 正に見よ此れらを)


 * * *

 改めて不思議な曲だと思います。
 ジョンのものと思われる詞も初見では捉えどころがなく、ポールのものと思われる作曲(アレンジ)もすごく独特。
 これがオーケストラアレンジに耐えられるというのは、やはり楽曲としての普遍性を持っているということでしょう。ビートルズの曲はそういうのが多いですね。
 訳にあたっていろんな記事を参照して背景はわかった(?)けれど、その後に来る、どんよりと重たい感じはなんなんだろう…。

 以下、ネタバレ含む解説。
「エリナー・リグビー」とは、ポールが作った架空の女性の名前で、彼女とその葬儀を執り行った神父マッケンジーに、都市に住む人々の孤独を託しているとのことです。
(しかし、リバプールにある教会にその名を刻んだ墓碑が実在するらしい…謎の多い曲だ)
 エリナーは、誰かの結婚式のライスシャワーのときの米粒を集めたり、来るとも知れない王子様(?)を待って、窓辺で化粧しながら街を眺めたりしています。
 神父マッケンジーもまた、聴衆の数なんてたかが知れた説教のための台本を用意したり、身なりを気にする必要なんてないのに、靴下に空いた穴を補修している。
 二人は多分エリナーの葬儀のときに邂逅したのでしょう。
 自分にも重なるなあ…。
 おそらく当時は、素直に悲劇的な話として書かれたのだと思います。
 ただ、世の中が世界規模で大きく変わっていく中で(60年代半ば)、必然的に生まれてくる人々の孤独をどう捉えて、どう描写したかったのかはわかりません。
 自分としては、孤独を遠ざけたり払拭したりするのは違う気がします。また、開き直ることも違う気がします。

 ちなみに、文語調(「此れら孤独の者ら〜」云々)にした部分は、神が地上の(孤独な)人々を「どうしたものか。こんなはずじゃ…」と嘆いているふうに捉えて、あえてそう書きました。なので、他の連は地上の人の言葉ということで、一字下げてあります。
 あくまで自見の解釈です。


✴︎words & sentences✴︎
・pick up:〜を拾う
 ※そのあとの「rice」は上記のとおり、ライスシャワーのときに落ちた米粒のこと。
・wear the face:化粧をする。顔を作る。(諸説あり)
・jar:瓶
・sermon:説教。小言。
・darn:縫う。繕う。かがる。
・bury:埋葬する
 ※後ろに「along with her name」とあるのは、彼女が結婚をせず苗字が変わらなかったことを示唆している。


おまけ動画

オーケストラver(詳細不明)


www.youtube.com