新元号〈令和〉を書道で見る
ネット上もリアルの世界も、散々話のネタになっていると思うのですが、2019年5月1日から始まる新元号が決まりましたね。
このブログは、別にそういうことは書かないものなのですが、この元号を書道の視点から見てみたいと思ったので、筆をとりました。
「平成」のときもそうなのですが、官房長官が掲げているこれ、だれが書いてるんだろうって思ってました。 「平成」については、河東純一さんという方で、内閣府の辞令専門官という役職らしいです。辞令を書くのが仕事。プロの書家が選ばれるのではなく、役人の中でプロ並みの腕を持つ方が選ばれるとのこと。
この字、いいなあと思っていて、調べたら以上のようなことでした(あやふやなので違っていたら教えてください)。
それで、今日発表された「令和」。菅官房長官が持ってました。 「平成」とはかなり趣が違いますね。これもネットで調べたらすぐ出てきました。
茂住修身(もずみ・おさみ)さんという方。この方も河東さんと同じく、内閣府の辞令専門官。大東文化大学を出られたとのことです(書家を志してから毎日100枚書いていたらしい!)。
nonmedia.net
だいたい保守的な書というものは、中国(や日本)の古典的な書家の書風を参考にして書くことが多いのですが、この字、もしかして…?と思うものがあったので、ちょっと挙げてみますね。 欧陽通(おう・ようとう)という書家で、7世紀、唐代の人です。父が有名な欧陽詢で、その後継として活躍したものの、父の存在が大き過ぎたのか、当時も現在も評価は父ほどではないようです。ただ、父の書法を正統的に受け継いで、なおかつ独自の世界を作っているのだろうなとは思います。
なんでこんなことを知っているかというと、今勉強している会派の本(毎月お題となるお手本が載ってるのが送られてくる)で、1月からこの欧陽通を勉強していたのでした。
なので、これって欧陽通?とピンときたのですが、どうでしょう?
「令」の右払いの太さや、「和」の禾の横画の入筆、縦画の下端での抑え方、なんかがそうだと思ったのですが。
ぼくはまだまだ勉強が浅いので、いやこっちだろう、という方もいるかもしれませんが、ちょっと気になったので書いてみました。
また、そもそもこの元号、出典は万葉集ということも広く知れ渡っています。
梅の花の歌32首を集めた章の序文にある言葉からとったのだと。
初春の令月にして気淑く風和らぎ 梅は鏡前の粉を披き 蘭は珮後の香を薫らす
しょしゅんのれいげつにしてきよくかぜやわらぎ うめはきょうぜんのこをひらき らんははいごのこうをかおらす
于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香
「令月」は、「よい月」という意味で、初春のいい月となって気候も穏やかに、風も和らぎ…ということになります。今の時期にぴったりです。「令」は命令という意味の他に、「よい。すぐれた。立派な。相手の親族を敬っていうことば」という意味もあると、漢和辞典にはあります。
で、書をやっている人なら同じことを考えた人もいると思うのですが、この文章を書きたくなったので、書きました。これがしたくてこのブログを書いたのです。ただし、筆ペンです。ちゃんと書きたいと思いながら、そこまでじゃないかと思ったり。 こんな感じで自分の創意で作品(?)を作るのは楽しいです。
字ひとつひとつの形、崩し方、上下・左右の字の関係などを考えながら。本当に未熟ですが、発表してみた次第でした。
お目汚し、失礼しました。